「やくら」にお越しいただいたことのある方は
所々に絵を飾っているのを見られたことがあるかと思います。
応接間の、改修前のやくらの様子を描いた作品…など
趣味で12年ほど絵を描いてきた私の作品を飾ってもらっております。
大きな絵を描いても、それを飾っておくスペースというのは確保しづらいものなので
やくらが出来上がった時に、絵を描く私にとって壁がたくさん見えていることが魅力のひとつでした。
普通の家だと家具や物が多くて
案外「壁」って見えていないものなのです。
絵を描くことは単純に趣味でしかなく
ただただ絵を描き続けてきただけの私の作品が
やくらと共にあることにより、たくさんの人の目に触れる機会を得られる!
なんて好待遇なんだろう!と思いました。
その上
「感じのいい絵や。こことよく合ってるねぇ」などと
絵に対する感想をいただくこともあり、とても嬉しくなることが多くありました。
その中で
火事によって焼けてしまった家を改修する、という方がやくらを訪れた際に
私の絵をとても気に入ってくれて
「家が出来上がったら、こんな絵を飾りたいんや」と言ってもらいました。
私は公募や展覧会用の習作しか描いたことがなく
人から頼まれ、誰かのために絵を描いたことはありません。
でも、父からその方の話を伺い
実際に私も会ってみて、うまく出来るかわからなかったけど
引き受けることにしました。
「どんな絵がいいですか?」
と、今まで私が描いてきたものを見てもらっていたのですが
やっぱり、その方の家を描くのがいいんじゃないか
そういう思いに辿りつき
元あった姿を私なりに思い浮かべ
篠山の町並みにも合うような描き方をすることにしました。
初めて人から頼まれて描くので
少々力を入れてしまい…時間もかけてしまいましたが
なかなか自分でも思い入れのある絵が描けたと思っています。
いよいよ絵を届ける日。
私自身、初めて絵を見ていただくので
ちょっぴりドキドキしながら真新しいお家にお邪魔しました。
依頼主の方は、とても楽しみにしていてくれたようで
箱を開け、アクリルに貼ってある紙を少しずつ剥がして
少しずつ見えてくる絵に歓声をあげてくれました。
「ちょっと私も気合いが入ってしまって…
思い入れも強かったのかタヌキが(依頼主に)似てしまったんですよ」
と、冗談っぽく言うと
「ホンマや!よぅ似とるわ…なぁ?」
と笑って答えてくださいました。
それからも長い時間、絵を眺めここが好きだとか
ここはどうやって描いてあるの?などと
本当に嬉しそうに見てもらえて
これこそ画家(←恐れ多いですが)冥利につきるってもんや!
と、私も感無量!な思いをさせていただきました。
機会をあたえていただき、本当にありがとうございました。
篠山の瓦の多い、格子のある独特な建物を描く勉強をさせていただきました。
どうやら玄関に飾っていただけるようで!
しかも、通りがかる人に「ちょっと見て!」と言ってくれているようで!
絵を続けてきて良かったな~と漠然とした満足感を得ました。
建築事務所でも絵を描く機会があるので
物を創り上げることって根本に同じものがあるのだと実感いたしました。
才本藍子