住みたい町ランキング上位に位置付けられるたんば(篠山市と丹波市を総称し平仮名表記しています)に住み暮らす楽しさを、設計という立場で係わった住宅を題材に、お話したいと思います。
旅先の秘境で人里を発見すると漠然と不便だろうなとか、都会のど真ん中で軒が重なり合う町屋をみると、田舎者の私には、とても住めないだろうなと感じます。「住めば都」人々は、不便でも息が詰まりそうでも、良い所も沢山あって、暮らし続けられるのでしょう。人の順応性には感心します。尤も訳有って仕方なく住んでいる人も沢山居られるのでしょうが。
話は少し横道に逸れますが、たんばでは茅葺民家を「くずや家(お粗末な家の意)」と呼んでいます。多分瓦屋根の家が建ち始めた頃に出来た言葉だと思います。差詰め現代版「くずや家」は、クロス・サイディング・コロニアル葺きでないものが該当するのでしょうか。となるとへそ曲がりな私などは、断然「くずや家」派なのですが。また最近は、ちょっとした古民家ブームで、本屋の棚には、古民家や田舎暮らしを特集した本が数多く並んでいます。ブームに乗って、古民家に住み続けようと意気込んでも、実際は暗いし寒いし改修すると言っても建てるほど費用が掛かるらしい。やっぱり脱くずや家・古民家だと、住宅展示場の優しい兄ちゃんもそう言っていたものな。となります。皆さん残したい気持ちがあっても現実中々たやすく容易く事は進みあせん。こうしてたんばの景観を形成している「くずや家」や古民家は、徐々に姿を消していくのが、現状でしょうか。
諦めることなかれ。残せるものは最大限残しながら、費用を掛けず快適に暮らすことは可能です。ただそこには様々な工夫が必要となります。それにも増して一番大事なことは、自分の家の「良さ」を再認識し生かすことです。設計をする場合、所謂コンセプトを決めなければ、図面が描けないと同様、「良さ」が見出せないと暮らす楽しさが、見えてきません。善しにつけ悪しきにつけ長く住み続けていると、「良さ」が見えなくなってきます。頑張って「良さ」を発見することが大事なのです。